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次の行動を想起できないエラー表示と、見つけ出すことができない「よくあるご質問」などのヘルプ機能。
どんなにサイトが素晴らしくても、こうした疑問や不安に応えられるエクスキューズの不備が、サイトの体験価値を下げてしまう。
使い方を教えないエラーメッセージ
検索ほど難しいインタフェースはない
今や何か情報を探したいときには、誰しもが「Google先生」に情報を尋ねる。いわゆる「検索」だ。もはや、検索無くしては先に進めないとも言える。
ユーザビリティの大家として著名なヤコブ・ニールセンの名言を集めたTwitterボットでも下記の様なくだりがツイートされている。
ユーザーはちょっとしたことでも、すぐ検索エンジンに助けを求める。
事実、新たな作業を行うとき、ユーザーが最初に見に行く所は通常検索エンジンだ。— ヤコブ・ニールセン – ユーザビリティ知見集 (@jakob_usability) November 18, 2019
しかし、その一方で、インターネットを利用するあらゆる人が同一で均一な知識とテクニックを有しているわけではない。
人それぞれ、知識に乏しい人もいれば、先生と崇めても良いほどの豊富な経験と知識を持っている人もいる。
これらすべての人が、まったく同一のインタフェースを利用するのだから、不公平と言えば不公平な話だが、そこに大きな落とし穴がある。
今回は、夢と魔法の王国でおなじみの「東京ディズニーリゾート」が運営している「東京ディズニーリゾート オンライン予約・購入サイト」を例にして、使い方を教えてくれない「エラーメッセージ」など、WEB操作の知識が乏しい人にとって使いにくいサイトにならないためのポイントを解説します!
夢と魔法の王国に泊まるのはラクじゃない!
ディズニーランドやディズニーシーに家族で旅行に行った方で、オフィシャルホテルに宿泊した方なら、利用したかも知れない下記サイト。
手慣れた人ならなんとも思わないことが、不慣れな人にとってはトラップが多く隠されていて、残念な意味で学習になるサイトである。
ポイントは3つ。
●エラー表示が具体的でないため、意味が分かりにくい
●何が問題かを解決するヒントが同じ画面にないし、
説明している場所への導線すらない
●ボキャブラリーが豊富でなけば、説明ページを探せない
私たち制作者は、いつの間にか自分たちの知識を基準にWEBサイトの機能を決めてしまうことがある。
それは避けたいことでありながら、制作費や納期などの関係からどうしても犯してしまう問題だ。そのことを常に、私たちは肝に銘じて、ユーザーの視点を忘れてはいけない。
ユーザが困っているときに、サイト内をうろうろして答えを見つけなくても、特にありそうなトラブルの答えをよういしておくほうが親切だ。
— ヤコブ・ニールセン – ユーザビリティ知見集 (@jakob_usability) November 3, 2019
そのためには、常にユーザーが「どこで躓くのか?」「何を知りたいのか?」「どんな問題が起こりうるのか?」を我々が先回りして考え、それを解決するための手段を同じページ内に用意しておくことが、大変重要な事なのである。
ましてや、ホスピタリティやおもてなしを売りにする企業のサイトなら、なおさらと言えよう。
だから、利用する側のボキャブラリーやリテラシーを考えた上で、彼ら彼女らが、どうしたら「ラクで」「直感的で」「容易に」「ストレス無く」目的を達成できるかを考えた、用意周到な導線設計と情報デザインによる「ユーザー視点」が必要なのです。
使い方がすぐわかる!
説明いらずの検索ツールこそが、秀逸なユーザー視点!
ディズニーランドに泊まりで行きたい!
パパ〜♪、ホテルの宿泊予約して〜♪
可愛い高校2年生の娘に、そんなことをおねだりされた日には、パパとしては良いところを見せなければいけない!がんばってサイトから予約して、良い思い出を作ってもらおうと思ったところが、大きな問題が立ちはだかる!!!!!!
エラー表示が具体的でないため、意味が分かりにくい
一般に、入力エラーが起きる理由はいたって簡単で「ユーザーが使い方を間違えるから」なのだが、今回の例は使い方は間違っていない。単純にサイト側の説明不足が原因だ。
であれば、簡潔なエラーメッセージで説明する事が重要なのだが、それも回りくどく、一瞬、目が点になる。

一般的なホテルの宿泊予約と、このサイトの宿泊予約の違いが最大の問題であることに気づいていただけただろうか?
普通は宿泊人数を設定して、その内子どもは何人なのかを設定するが、このサイトでは大人と子どもの人数をそれぞれ設定するため、代表宿泊者が未成年になることが明確に示される。
そのため、1部屋に大人が1名以上要ることを「部屋数を大人人数以内でご入力ください」などと記しているわけだ。
ユーザの限られた時間を無駄にせず、すんなりと理解してもらうためには、簡潔に分かり易く書くしかない。気取った表現を使ったところで誰もほめはしないし、ユーザに受けるわけでもない。
— ヤコブ・ニールセン – ユーザビリティ知見集 (@jakob_usability) November 8, 2019
このサイトではクレジットカードや振込などで宿泊料金の一部をお申込金として先払いすることで予約が確定するため、決済が完了するなら宿泊の「予約は代理でもできる」と普通は考えがちだが、平たく言うと「未成年だけの宿泊予約は受け付けない」ということになる。
何が問題かを解決するヒントが同じ画面にないし、
説明している場所への導線すらない
ユーザが困っているときに、サイト内をうろうろして答えを見つけなくても、特にありそうなトラブルの答えをよういしておくほうが親切だ。
— ヤコブ・ニールセン – ユーザビリティ知見集 (@jakob_usability) November 3, 2019
普通の親なら、「だったらそんなこと最初に書け」と、少々不愉快になることだろう。
このサイトのトップページで容易に検索が可能な簡易検索機能が設置されていることは評価できるが、こういった「使い方」に関しての情報は何も記されていないため、いわゆる「よくある質問」や「ヘルプ」に頼らざるを得ない。

画面のヘッダーとフッターにそれぞれ用意された「ヘルプ」と「よくある質問」から、ユーザー自身が情報を探し出して確認するしかないのだが、こういった情報は、エラーメッセージにリンクを貼るか、当該画面に直接表示するだけで、ユーザーのストレスは軽減され、無駄な時間を使わずに済む。それがユーザー視点だ。
そして「よくあるご質問」にエラーメッセージがでた理由が示されている。

そもそも「インターネット予約」はオフラインでのやりとりをせずに、オンラインで完結する仕組みであるのだから、このID11842の画面で示された「同意書を宿泊ホテルに提出」した事実を、宿泊予定日を「検索する前に」申告するプロセスすらない。
要するに、ユーザーはこの質問の答えを読んだところで、この回答では問題は何も解決しない。
そしてもっとも厄介なことは、「よくあるご質問」の中から、この回答を探し出せた人だけが、この事実を知るということだ!

「子ども」を選択した際に注意書きが表示されるのだから、せめてこの場所に具体的に同意書の件と説明ページへのリンクを貼り、どういう手続が必要かを具体的で端的に明示することが必要だ。それこそが、夢と魔法の王国がすべき「おもてなし」ではないだろうか。
ズルをして「ひとりを大人のフリ」して申込を進めていくと、オンラインでの予約を完了することは可能だ。

注意書きに、『未成年の方のみでご宿泊される場合、親権者様に「同意書」の提出をいただいております。詳細は 各ホテルのお知らせページ をご覧ください。』と書いてあり、「各ホテルのお知らせページ」へ遷移すると、東京ディズニーセレブレーションホテルを予約しているにもかかわらず「東京ディズニーランドホテル」がデフォルト表示されており、「東京ディズニーセレブレーションホテル」に切り替えた後、お知らせ欄をスクロールしていくと8個目に表示される。ディズニーランドホテルの場合だと、なんと15個目になる。
こんな重要な情報がわざわざユーザーに探させなければ表示しないのであれば、無いも同然の情報と言われてもしかたない。
なぜ、このリンクこそ「よくあるご質問」の当該ページにしないのか理解に苦しむ。
ボキャブラリーが豊富でなけば、説明ページを探せない
「よくあるご質問」という機能は、便利なツールのように思われがちだが、実はとても不親切な機能だ。
筆者はセミナー開催中に、生徒に「『よくあるご質問』は使うか?」と尋ねるが、女性のほとんどは「使う」と答える一方で男性のほとんどは「使わない」と回答する。
どんなに素晴らしい回答が並んでいようが、使われなければ何の意味もない。第一、目的のページそのものに情報が書いてあれば、「よくあるご質問」など不要なだけでなく、男女問わず伝わるはずなので、わざわざ別ページにすること自体が首をかしげる。
そして、「よくあるご質問」にはたくさんの回答があるために、多くのサイトでは検索して探し出さなけれい。これが、改めて厄介極まりない。
読者のみなさんなら、この問題をどう検索するだろう?

「ご利用いただけるサービスやパッケージ」も「サイトの使い方」も、単なる説明リンクなので、直接項目を選べるリンクは無いので、問題を解決できない。
なので、すべて「キーワード1」に入力するキーワードとカテゴリーの選択にかかっているため、ユーザーのボキャブラリーが試される。

おそらく、一般的にはユーザー自身が「やりたいこと」をそのままキーワードに入力することだろう。しかし、残念ながら答えは得られない。

ユーザー側に非があるかのような検索結果には、残念ながらストレスが溜まる。

つたないボキャブラリーを100本ノックのように、打ち出しても時間を浪費するだけで、糸口にさえ到達できない。
左サイドにある「カテゴリから探す」の「ホテル」の中にある「予約」がセレクトされていて気づきにくいが、ここをクリックすると、「予約」に関するFAQが20件表示される。

なんと、その中の一番最初に「インターネットで未成年のみの予約をすることができますか?」がやっと出てくる!
では、キーワードに「予約」を入れて「カテゴリー」を「ホテルの予約」にすれば出てくるのかと思いきや、夢も希望もない。。。
実は、同質問は、5ページ目の最後から2番目にやっと出てくる。しかも、「ホテルの予約」を絞り込んでいるのに検索結果にはなんら反映されていない。


普通なら5ページ目までリンクを追いかけてきてはくれない。
行き先が曖昧なリンクを次々にクリックしながら「ああでもない、こうでもない」と気長につきあってくれるユーザはまずいない。
— ヤコブ・ニールセン – ユーザビリティ知見集 (@jakob_usability) November 13, 2019
この「よくあるご質問」の中から、キーワード検索で探し出すには、仕組み上「部分一致」のキーワードを示す必要があるため、「未成年」のキーワードが思い浮かばなければお手上げに近いだろう。

ユーザの期待を理解すれば、そうした期待を裏切らないレイアウトが可能になるのだ。ユーザを無理に振り向かせるために過剰なデザインに頼る必要もなくなる。ユーザの期待を踏まえてページをレイアウトすれば、自然と注目してくれるのである。
— ヤコブ・ニールセン – ユーザビリティ知見集 (@jakob_usability) November 11, 2019
「ユーザー視点」とはこういうことなんだと思う。
利用する側のボキャブラリーやリテラシーを考えた上で、彼ら彼女らが、どうしたら「ラクで」「直感的で」「容易に」「ストレス無く」目的を達成できるかを、用意周到に考えた導線設計と情報デザインが必要なのです。
いろいろナンクセをつけてしまったが、このサイトには素晴らしい気配りが存在していた。その点をオマケで紹介したい。(でも最後もナンクセになってしまう泣)
まずは現行サイトのインタフェース。


「現在の」インタフェースでは、「空きだけ」を表示する機能によって、満室表示を出さないことができ、目的の情報をスムーズに見つけることができる。
しかし人気の日程で、満室ばかりの期間は気が滅入るばかりである。
宿泊予約サイトにおいてもっとも不快で面倒なのが、検索日が満室の時。日程優先で他に選択がない場合はいかんともしがたいのだが、日程に融通が利く人にとっては、ピンポイントで日程を都度都度変えて、検索を繰りかえさなければいけない。
意外な日程に空きが有っても、検索で見つけ出せなければ、そんなチャンスに巡り会うこともない。
その点で旧デザイン(2018年画面動画撮影当時)の検索結果では、検索日の周辺が同時表示されるため、「いつなら泊まれるのか」が一目瞭然だった。
検索における「再検索機能」はそのサイトのホスピタリティを左右する重要な機能だ。ユーザーが自身でわざわざ再検索しなければならない機能は、ユーザー視点ではない。


例のように満室表示された場合、目的の23日日曜日は満室だが、日程を1日早めることができれば、22日土曜日に泊まれる事がわかる。また、どうしても日曜日にこだわるなら、翌月の6日であれば空いていることがわかる。
たったこれだけの情報で、頻繁に検索する手間ひまも不要だし、状況も理解できるのでストレスになりにくい。

きっと、ユーザーの声などを参考にして改修したのだろうが、検索におけるインタフェースは、うまく行かないときに、「いかに容易に代替案や最適な情報へ到達できるヒントを提示できるか?!」なのではないかと思います。
その点で、この機能が無くなってしまったことは残念でなりません。
特に、たまにしか行かないような場所で、絶対に泊まりたいと思う気持ちが強いほど、ユーザーはがんばって検索して、泊まれる方法を探し出そうとするわけですから、その気持ちに少しでも応えられるインタフェースを我々制作側が提供できるようにしたいですね。
「自社のサイトを訪れるユーザは、何らかの目的を持ってくる人々だろうか?」答えがYESなら、ユーザビリティの問題と無縁ではいられないはずだ。
— ヤコブ・ニールセン – ユーザビリティ知見集 (@jakob_usability) November 8, 2019