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選択肢の中で極端すぎない
中間の選択肢を選びやすくなる
極端に高いクオリティの製品と、極端に低いクオリティの製品がある場合、その中間に位置する製品を妥協的に選びやすい消費傾向がある。
日本の伝統的なランク付けの表現で、「松(高級)」「竹(中級)」「梅(廉価)」の3つの選択肢を例にすると、
・松セット(高級食材を使い、品数も多い豪華な高級コース)
・竹セット(バランスが取れていて、適度に豪華な中級コース)
・梅セット(必要最低限の内容で、お手頃な価格の廉価コース)
人は、極端に贅沢な選択肢を避ける傾向や、バランスのとれたミドルクラスの選択肢がもっとも適切で魅力的と考える傾向から、竹セットが選ばれやすい。
この心理的な効果は、選択肢が極端であるほど、消費者にとっては中間の選択肢に対して「ちょうどよい魅力的な選択」にみえるため、マーケティングや価格設定の戦略として多く利用されている。
▼高価格・高品質の「松」を追加する(高級アンカリング)
売りたいのが「B(中価格・中品質)」の場合:高価格・高品質なC(松)を追加すると、Bが妥協点として選ばれやすい。
●もともとA:1,000円(安価)とB:2,000円(標準) の2つしかなかった場合、
●C:5,000円(超高級) を追加する。
●すると、2,000円のBが「ちょうどよい選択肢」として魅力的に見える。
高価格の選択肢(C)を追加することで、Bが「妥協点」として選ばれやすくなる。
顧客は「A(安すぎる)でもなく、C(高すぎる)でもない、Bが最適」と判断する。
▼低価格・低品質の「梅」を追加する(安価アンカリング)
売りたいのが「A(安価モデル)」の場合:極端に低価格・低品質なC(梅)を追加すると、Aが無難な選択肢になる。
●もともとA:1,000円(安価)とB:2,000円(標準)しかなかった場合、
●C:500円(最低限の機能のみ)を追加する。
●すると、2,000円のBが「ちょうどよい選択肢」として魅力的に見える。
極端に安い(=機能が少なすぎる)Cがあることで、「Bの方が賢い選択」と思わせる。
▼中間的な選択肢を意図的に作る
売りたいのが「C(新しい中間モデル)」の場合:AとBの間に新たな選択肢として追加すると、Bが高すぎると感じていた層がCを選びやすくなる。
●もともとA:安価モデル(スペック低)とB:高価モデル(スペック高)の2種類しかなかった場合、
●C:中間スペックのモデルを用意する。
●Cが登場することで、Bが「高すぎる」と感じていた層がCを選ぶようになる。
消費者は「最安モデル(A)は性能不足」「最高モデル(B)はオーバースペック」と考え、中間のCを選びやすくなる。

具体例
- サブスクリプションのメニューとして「スタンダード」「プレミアム」のプランに、安価な「エントリー」を追加すると「スタンダード」が選ばれやすい
- レストランのメニュー体系に超高級なプレミアムメニューを期間限定などで追加する
- モデル末期の自動車のラインナップに、中間的な位置づけとして特別仕様車を追加する
提唱者・発祥エピソード
1981年に極端な選択肢よりも中間的な選択肢が選ばれやすくなる現象として、アメリカのマーケティング研究者イットマー・シモンソン氏が「理由に基づく選択:魅力効果と妥協効果の事例(The Case of Attraction and Compromise Effects)」としてまとめられた。
表現可能なデザインパーツ
参考文献・参考サイト
妥協効果とは? 成功事例で押さえておきたいマーケティングのリアル
マーケターブログ
https://marketer7.com/compromise-effect/
行動経済学(6) 妥協効果と魅力効果
若手総合法務アドバイザーの備忘録
https://blog.goo.ne.jp/imai0410/e/95471d8f39e58a33e1a6d989f85fbb7f
妥協効果と魅力効果
晴香葉子 ブログ
https://ameblo.jp/harukayoko/entry-12291474952.html
寿司屋で「梅」より高価な「竹」を多く売る方法…アンカリング効果
Business Journal
https://biz-journal.jp/2019/02/post_26677_2.html