記事目次
人々の行動を自然にベターな方向へ
サジェストするしくみ
人は意思決定をする際、強制されるよりもそれとなく誘導される方が選択しやすいという性質がある。
そこで、行動を強制したりせずに、小さなきっかけとなる選択肢を与えることで、本人が無意識のうちに「良い選択」ができるように誘導する、人の行動を変える経済行動学で用いられる理論。
英語の「Nudge」には「ゆっくり動かす」「近づく」「やさしく説得する」などの意味があり、「そっと後押しする」という意味で使われる。
良い傾向のナッジを実戦するためのフレームワークがいくつかあり、イギリス政府がナッジを活用する際に、特に効果的だった「EAST」は広く用いられている。
●Easy:シンプルなメッセージで、行動の難易度を下げる。
●Attractive:選択肢を魅力的にし、印象に残す。
●Social:みんなやってるという、社会性を意識させる。
●Timely:ニーズが高まる、最適なタイミングで伝える。
また、「実践 行動経済学」の著書の中で良い選択肢構造として示された6つの基本原則「NUDGES」も有名。
●iNcentives(インセンティブ):
金銭に限らず、さまざまな角度でメリットを与える
●Understanding mappings(マッピング):
選択肢に対する結果をわかるようにする
●Defaults(デフォルト):
有益な選択肢をデフォルトの設定にする
●Give feedback(フィードバックを与える):
選択した行動の結果をフィードバックする
●Expect error(エラーの予期):
予測できるエラーやミスに対して予防や対策を講じる
●Structure complex choices(複雑な選択の体系化):
複雑な選択肢は整理してわかりやすくする
また、人間関係やチームワークの向上など、社内コミュニケーションの活性化にも役立つ。
●目標を細分化して些細なことから会話できるようにする
●会話を円滑にするために、会話に入る冒頭の言葉を決めておく
●取り組みに対する評価や指摘などをフィードバックする
●人の記憶や処理には限界があるのでリマインドする
ちなみに、良いナッジもあれば悪いナッジもあり、不利益になる選択肢に誘導するようなしくみを「スラッジ(Sludge ヘドロ)」とも呼ばれている。
たとえば、退会しようとするユーザーに何度も思いとどまらせるメッセージを表示したり、商品の通常価格を不当に高く設定して、お得感を偽るもの。

表現可能なデザインパーツ
具体例
- 公衆男子トイレの便器に的となるシールを貼り、美化に貢献
- エスカレーター横の階段を楽しいデザインにラッピングすることで健康増進に寄与
- 高速道路などの分岐で、行き先ごとに色分けして、進路の間違いを防止
- WEBフォームなどで、よく利用される選択肢をデフォルトに設定
提唱者・発祥エピソード
アメリカの行動経済学者のリチャード・セイラー教授と共同研究者のキャス・サンスティーン氏による2008年の著書「実践 行動経済学(Nudge: Improving Decisions about Health, Wealth, and Happiness)」によって提唱され、セイラー教授が2017年にナッジの活用に関し、ノーベル経済学賞を受賞したことで注目が集まり、広く社会に認知されることとなった。
参考文献・参考サイト
UIデザインのための心理学:33の法則・原則(実例つき)
knowledge/baigie
https://baigie.me/officialblog/2022/03/29/psychology_for_uidesign/
UX TIMES
ナッジとは? 理論の定義、事例、活用方法をわかりやすく解説
kaonavi人事用語集
https://www.kaonavi.jp/dictionary/nudge/
ナッジ理論とは?ノーベル経済学賞を受賞した、人を操る現代の魔法
Workship MAGAZINE
https://goworkship.com/magazine/nudge-logic/
実は身近にあるナッジ理論とは?ビジネスや組織強化への活用方法をご紹介
Talknote Magazine
https://talknote.com/magazine/nudge-theory/
ナッジとは?理論の意味や効果、事例をわかりやすく解説
NECソリューションイノベータ
https://www.nec-solutioninnovators.co.jp/sp/contents/column/20230519_nudge.html